安心できる環境は、自分で守る。
そして自分以外にも、全ての人にその権利がある。
これが、性教育の基本だと思っています。
先月ちょっとマレーシアに行ってきまして、
そこで、マレーシアで子育てしている日本の女性たちとお話しする機会がありました。
マレーシアでの教育で困っていることがあるかとお尋ねしたところ、
「性教育!」と間髪入れず答えが返ってきました。
詳しく事情を聞きますと、
日本語学習とか学費とかいろんなことを考慮して、
日本人学校とインターナショナルスクールを行き来する子が多いようなのですが、
一番違いが大きいのが、性教育だそうです。
インターナショナルスクールでは中学3年生で性行為の動画を見せる。
一方で、日本人学校は、
精子と卵子はわかったけどだからなんなんだ?と思うような、ぼやかした表現ばかり。
そのギャップを、家庭で埋めなければいけないが、
どう子供に伝えたらいいのかわからない、とのこと。
大事なことなのに、照れてしまってうまく言えない。
子供がちゃんと聞いてくれない。
というか、そもそも、
子供を性犯罪被害者・加害者にしないために何を伝えたらいいのか、
なんでよく知らない人とセックスしないほうがいいのか、
なんでパンツを売って稼いじゃいけないのか、
という答えを、持っていない。
実は、マレーシアに滞在中に、私が一番ショックを受けたのは、
女性ってこんなに弱かったっけ…
男性ってこんなに思いやりがなかったっけ…
ということでした。
ほとんどの男性は、
日本の女性は押しに弱いと、知っています。
そして、そのような態度で接してきます。
そこから自分を守る方法を、日本の女性は知りません。
ホームパーティ中、50代の男性が、ずっと20代の女性の手を握っていました。
気持ち悪くて、なんでその手を振りほどくことができないんだ、と女性に対して怒りを感じてしまったりもしました。
毎日毎日ハグや握手を求めてくる男性に「申し訳ないが、私は、そういうの得意じゃない」と断ったら「普通の日本の女性はすごくスキンシップが好きなのに!」と言われました。彼は、日本の人同士では握手もあまりしないことを知りませんでした。
日本の女性は、お酒を断る時も笑ったりして結局断りきれず、飲んでしまいます。
すごくすごく不愉快な冗談を何度も言われても、笑いながら「なんでそんなこと言うの?」と聞くだけで怒りません。
ある男性が、母国の保守的な地域では、
女性が結婚するときは処女でなければいけなくて、
病院の証明書を要求される場合もあるんだ、と話してたとき、
私は「新郎も童貞だって証明書が発行するべきだ」とか言ってみんなと笑っていました。
「女性だって自慰するし、スポーツで出血する子もいるよね。それはどうなるの?」と私が質問したとき、向かいにいた話を聞いていた男性たちが「いやいや、ちょっとお酒飲み過ぎですよ!彼女の発言気にしないで、変な子だから!」と私の質問を取り消しました。
この事件を、私はまだうまく処理できていません。
山の近くの出身の女性に「君の親は猿か」とからかったり、
初めて会った女性に「何歳ぐらいで結婚したいか」と聞いたり、
お酒好きな女性を大げさにからかったりするのは、日本の男性だけでした。
話が変わりますが、
LGBTについての研修などでお話していると、ときどき、
参加者から頓珍漢な質問が寄せられます。
「小学生とセックスしたい人たちの権利も守るべきだ」とか
「LGBTを生理的に受け付けられない人の権利を守るべきだ」とか。
多くの性犯罪でも、「合意」があったのか、なかったのかについて、
不可解で不愉快な判決がおりています。
自己決定とか、民主主義とか、
そういうベースの理念が共有されてないんだと、気づきました。
マレーシアで子育てしている女性たちには、
私が、バイブルのように大事にしている2つの本を紹介しました。
リヒテルズ直子著『オランダの共生教育 学校が<公共心>を育てる』平凡社 2010
ひとつめの本、主な話題は、いかにして個性を伸ばす教育を運営しているのか、歴史と理論の解説ですが、
かなりのページ数を、性教育とジェンダー教育の紹介にさいています。
オランダでは4歳から始まるという性教育。
以下は、最初の授業の様子です。
車座になった子どもたちの真ん中に、腕を通せるくらいの穴を開けた箱を置きます。箱の中には、スポンジ、柔らかい布、くしゃくしゃにした紙などが入れてあります、子どもたちは順番に穴から手を入れてみて、中のものに触り、どんな感じがするか、意見を言いあいます。それから、子どもたちが持ち寄ったお気に入りのぬいぐるみを見せあい、ぬいぐるみを抱きしめたときの感じ、お母さんに抱かれたときの感じなどについてワイワイガヤガヤ話をします。(p.138 l.7-11)
まずは、子供達が大好きな身体的な接触を、肯定すること。
そして、それは、人それぞれ違うということを、4歳の時から、しっかり言葉にして伝えてゆくんです。
デビ・ブラウン著『アスピーガールの心と体を守る性のルール』東洋館出版社 2017
なぜ彼氏以外とセックスしちゃいけないのか、
性被害にあってしまったらどうしたらいいのか、
ということがきちんと丁寧に書かれています。
自分の肉体の管理者は、自分である。
歯も、腎臓も、子宮も、膣も、全部自分の肉体なんです。
この考えをちゃんと持っていれば、
数ある内蔵の内のひとつについての説明が、
恥ずかしくてできない、ということが無くなるのではないか。
友達であれ、知らない人であれ、
突然、口に、他人の手を突っ込まれる衝撃は誰もが想像できるのに
性犯罪がこんなに軽んじられているのは、
性(性器)は自分の管理下には無いという思想が、流布しているからではないかと、
最近はそんなことを考えておるのです。

