2009年7月12日日曜日
『ほかに誰がいる』
なにか良いことが起こるような気がした木曜日。
志村貴子の『どうにかなる日々』を買おうと大学近くの書店に入るも、
在庫がなく、しょんぼり。うーん、と本棚の間をうろうろしながら目についた本を手に取る。
『ほかに誰がいる』 朝倉かすみ 幻冬舎(幻冬舎文庫) 2008
木曜日の夜と、金曜日の朝に読んでしまった。
ゆっくり読んだら、もう、主人公がいなくなってしまいそうなぐらいの疾走感。
主人公の物語がはじまる。
そして終わる。
そんな感じの恋のお話。
えりは一目惚れの相手を、心の中で「天鵞絨(びろうど)」と呼ぶ。
髪型も、眉の形も、肌の色も、天鵞絨と同じにして、
愛しいあのひとと同化したい、あのひとに吸収され、あのひとを吸収したいと願う。
あのひとの名前をノートに書く。
あのひとが触れたものを大事に取っておく。
16歳の恋は素敵。
「苦しければ苦しいほど、私の心は磨かれるのだと思った。
私はそれだけ天鵞絨に奉仕し、天鵞絨のことだけを考えているのだから、それをわかってもらいたかった。わかってもらえなくてもいいのではないかな、とも思った。しかし、それは間違った考えだと私はすぐに反省する。天鵞絨は、天鵞絨のままでいい。」(p.26-27)
「好きということばは、天鵞絨のためだけのものだ。
天鵞絨以外のひとに対して、好きということばを、たとえ使わなくても、そう思っただけで、わたしはわたしを罰しなければならないのだった。
子猫が空き地で昼寝をしていて、ミルクをのんだばかりとおぼしきお腹がふっくりふくらんでいたとしても、『かわいい』などと思ってはならない。わたしは心を動かしてはならない。天鵞絨以外の対象に愛情を注いではならないからだ。
天鵞絨への忠誠は、いつか完全にひとつに重なるわたしたちの、『わたしたち』という人格を形成するのに欠かせないものだと思っている。
『わたしたち』という人格を築いていくために必要なのは、おもに私の努力なのだ。
わたしは信じていた。
わたしの努力や、少しばかりの犠牲を天鵞絨に気取られてはならない。気づかれなければ、うまくいく、と。」(p.34-35)
えりは天鵞絨に近づくために、精一杯のことをした。
天鵞絨と関係あるもの全てと、結びつきたいと思った。
そうして天鵞絨と繋がる。
これは正しいと思う。
天鵞絨本人よりも、天鵞絨の好きなもの、天鵞絨の家族が大事。
突っ走る恋、突っ走る盲目。
若いな、素敵だな。
でも、憧れない。
いいな、いいな。
でも、したいとは思わない。
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿