2008年7月2日水曜日

『歯とスパイ』


随分前に、ロシア文学目録として、
沼野恭子の『夢のありか』(作品社)を買った。
巻末の東欧文学の書評の中で、目に留まったのが、


『歯とスパイ』 ジョルジョ・プレスブルゲル著 鈴木昭裕訳  河出書房新社


プレスブルゲルはブダペストに生まれ、
19歳の時、ハンガリー騒乱の際にイタリアに亡命。
ローマにおいて、演劇や映画の脚本、小説で活躍しているようです。
題名と、訳者が<歯覚小説><歯想小説><歯科医小説>と述べたように、
この本のほとんどが、歯、歯磨き、歯痛、抜歯、歯科医に関すること。

この本は、精神分析学会会員(と思われる人物)G・Nの所に、
S・Gから送りつけられた原稿を、G.Nが年代順に整理し、出版したものである。
原稿の著者は、S・Gと友人関係にあるということになっている。

歯の一つ一つは、持ち主の人生である役割をし、
世界(時に神)と主人を結びつける重要なものである。
ある歯は、ある一人の女性への恋心を象徴し、
ある歯は、東アジアの大国の革命家の死を、主人の身体に刻む。

どうやら語り手は、スパイらしいが、どんな仕事をしているかは分からない。
名前も、わからない。
歯痛と治療の合間に、語り手の生活がさし挟まっているような話。
読んでいて、治療済みの歯が痛み出すような話。

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