2012年6月18日月曜日

月報13-NIGHT WISH

(2008年05月 某クラシックオーケストラの月報コラム)
修正 2012年06月23日


お久しぶりです。長らく月報から離れていました。すみません。
さて、昨年一年間、ロックやハード・ロックの話をしてきました。全部で10組ほどのバンドを紹介したと思います。「月報にクラシック音楽のコラムがない」と、さまざまな形で悪評を得てきたわけですが、私にとって、今までは下準備でしかなかったのです。そう、メタルの話をするための。

今回紹介するのはフィンランドの国民的シンフォニック・メタル・バンドNightwishです。
シンフォニック・メタルとは?
ヘヴィ・メタル(ハード・ロック)から派生した、オーケストラやアンサンブルを中心に作り上げたメタルです。ロックにクラシック音楽を取り入れようとする動きは決して新しいものではありません。1970年に、ロック・バンド、Deep Purpleとロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団の演奏を公開してから、ロックとクラシック音楽を結びつける様々な活動が行われています。既にあった、民族音楽の旋律を取り入れたロックを追求する動きの中で、80年代後半には、バッハやヴィヴァルディをメタル調に編曲したものが盛んに作られていました。ネオ・クラシカル・メタルと呼ばれる分野です。
それに比べてシンフォニック・メタルは、映画のサウンドトラックやミュージカル音楽に非常に近く、ハリウッド・メタルなどとも呼ばれています。とても聴きやすく、また聴きなれている曲調ですが、日本では特に、ファンタジーの要素を含むシンフォニック・メタルが大変人気です。最近は、ドラクエやFFに代表されるようなゲーム音楽に似た曲を、RPGメタルと呼んだりしています。音楽は現在進行形で細分化されているのですね。
シンフォニック・メタルの中でも特に、声楽的な訓練を受けたボーカルを起用している音楽を、オペッラティック・メタルとも呼びます。Nightwishがこのジャンルの代表バンドで、初代リード・ボーカルのターヤ・トゥルネンは、現在リート(独唱曲)歌手としてソロ活動をしています。彼女の伝統的な歌声を武器に、Nightwishは社会的評価も上がり、2005年のヘルシンキの世界陸上大会の開会式で前年のヒット曲を堂々と披露しているのです。
そしてこのNightwish、世界中で愛される楽曲、「オペラ座の怪人」をカバーしています。もちろんメタルですから、原曲に比べて重低音が強めです。そして、バンドを強調した編曲なので、オケはバックミュージックに徹し、すこし音の厚みは減ります。が、こんな音楽聞いてしまったら、クラシックとは何なのか、大変考えさせられますね!

ということで、現在はボーカルが交代してしまっていますが、まだターヤが歌っていた時代、2002年発売のアルバム『Century Child』をレビューします。本人達は否定していますが、多くのリスナーにゴシック・メタルと言われているように、彼らの音楽は比較的、暗く、悲しい音楽です。アルバムのジャケットも暗いです。しかしそれは、女性ボーカルをより魅力的に聞かせるための、単純な工夫なのかもしれません。

Bless The Child 女性コーラスの上に、男性の語りから入るこの歌は、まさに序章といったところです。死にゆく幼い子供を通して、世界の闇を訴えています。
End Of All Hope 一曲目から続くクレッシェンドでそのまま二曲目に突入。子供というモチーフが、希望を示しているのか、悪をあらわしているのか。独りよがりで排他的な詩が、主人公の苦悩を表しています。
Dead To The World 暗い歌詞の割に、元気のある曲です。沈黙の世界に恋焦がれ、救いを求める主人公が恐れているのは、子供?フェードアウトした後の、フォルテの女性と男性ボーカルのユニゾンに鳥肌…。
Ever Dream 前の3曲と比べて、ちょっと病的な愛を感じさせる歌です。シングルカットされた、このアルバムの代表曲でもあります。
Slaying The Dreamer 子供は、夢見る主人公を殺そうとする、自己満足な審判者であったのです。審判者への憎しみを包み隠さず叫ぶ詩と、重厚な低音とコーラスがドラマティック。
Forever Yours 濃厚な霧のようなオーケストラとボーカルのバラード。抵抗がまったくの無駄に終わってしまった脱力感と、悲しみの歌。曲中の笛はなんだ?
Ocean Soul 闇の中を孤独に、必死にさまよう主人公の苦しみを重く歌い上げます。希望と絶望の交じり合った不思議な感覚です。
Feel For You 愛する人を支配したいという欲望なのか、絶対的な力への言葉だけの抵抗なのか。イントロのベースソロは素敵。ターヤのウィスパーボイスが色っぽい一曲。
The Phantom Of The Opera きたー!って感じで、イントロでテンションがあがります。映画版に比べて、クリスティーヌの声は芯があり太いので、悪女みたい。ファントムは濁声が少し入っているので、ワイルドなお方のようです。
Beauty Of The Beast 10分以上に及ぶ大曲。<long lost love><one more night to love><christabel>の三部に別れており、まさにこのバンドの真骨頂。重厚な音の層と、その上でしっかりと歌い上げるボーカルとコーラスが、濃厚なチョコレートケーキのようにずっしりと頭に響きます。
The Wayfarer 日本版ボーナストラックなので割愛。

ミュージカルが好きな人は是非聞いてみてください。きっと気に入っていただけると思います。ただし、ロックの重低音とは比べ物にならないほどズンズンしていますので、心臓の弱い方は要注意です

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