季節はずれの雨の日の後の晴天。
空は見事な水色で、風はしっとりと庭の木をゆらしていた。
天気が良いと、全てのことが問題ではなくなってしまうので、とても困る。
私は何か悩んでいたはずだ。
ぼんやりと考えていたはずだ。
窓ガラスがあまりにも透明だとか、落ちた椿のピンク色が嘘くさいとか、名前も知らない鳥のことを。
天気が良いと、全てのことが問題ではなくなってしまうので、とても困る。
10年前の毎日は、閉ざされ、暗く、冷たかった。
世界に関与できないという、焦燥だったのかもしれない。
世界をそのまま感じることが出来ないという強い不安でもあった。
世界はつまらなかった。
白神山地の山奥で、落ち葉と一緒に腐り果てたいと、消えてしまいたいと、願い続けた。
生きていれば、もっと「できるはずだ」という思いも、同じぐらい強くあった。
長かった。とてもとても長かった。
最も鮮やかに覚えているのは、終わったと、思った瞬間のことだ。
霧が晴れていくように、みるみる世界が色づいてゆくのがわかった。
空がきれいだと、涙が止まらなかった。人の体温で氷が溶けてゆくように、ぼたぼたと落ちた。
今日の空はそんなことを思い出させる。
多くの友人が悩んでいる。
死にたい殺したい消えたい傷つけたいと願っている。
10年前の私が、何を望んでいたのか、今はまったく思い出せない。
2015年4月21日火曜日
2015年2月17日火曜日
犬たち
犬たち
熱狂する恋人たちも 騒がしい学者どもも
早春の頃ともなれば 等しく犬を愛す
義理堅くもわがまま 私の思慕たる犬
主人同様せっかちで 食べるのが好きな生き物
鍛錬の友にして快楽の友
衝動と快楽の闇を追い求めるもの
もしも一目で噛み付かなければ
ディオニソスも酒の友にしただろう
彼らが物思いに耽るときの姿は
ささやかな風にゆらめく柳のようだ
冬の窓辺でまどろむかのような
そのしなやかな足には 軽快な音楽が発し
その深淵な目には 星雲のごとき
燃えるかけらが 柔らかく光る
2015.02
犬と一緒に住む人。
元ネタはボードレールの『猫たち』
熱狂する恋人たちも 騒がしい学者どもも
早春の頃ともなれば 等しく犬を愛す
義理堅くもわがまま 私の思慕たる犬
主人同様せっかちで 食べるのが好きな生き物
鍛錬の友にして快楽の友
衝動と快楽の闇を追い求めるもの
もしも一目で噛み付かなければ
ディオニソスも酒の友にしただろう
彼らが物思いに耽るときの姿は
ささやかな風にゆらめく柳のようだ
冬の窓辺でまどろむかのような
そのしなやかな足には 軽快な音楽が発し
その深淵な目には 星雲のごとき
燃えるかけらが 柔らかく光る
2015.02
犬と一緒に住む人。
元ネタはボードレールの『猫たち』
私小説『きのこのマリネ』
私が作るマリネはまずい。
料理が苦手な訳じゃない。鯖の味噌煮や豆カレー、ボルシチを作るのが好きで、自慢じゃないが、良く褒められる。友人の誕生日に鳥の丸焼きを作ったこともある。
マリネはだめだ。なぜかだめだ。普段あまり使わない計量スプーンで、慎重に作っても、まずい。茄子でも、きのこでも。
マリネより苦手なものは観葉植物だ。
一番育て易いと言われているアイビーを何度も枯らしている。ちなみにミントも枯れた。
唯一健康に育っているのは、実家から連れてきた多肉植物。
しばらく存在を忘れていたのだが、冬の、酷く風が強い夜にベランダを覗いてみたら、満開に花を咲かせていた。
わっと、無責任にも心が沸き立ち、仲間が必要だろうと観葉植物を買ってきた。みるみるうちにしぼんでゆき、やがて全ての葉が落ちた。
母の日の前日、行列にまじって多肉植物を買った。
きのこのマリネを作った。
ちょっと、塩味が足りなかった。
2014.05
料理が苦手な訳じゃない。鯖の味噌煮や豆カレー、ボルシチを作るのが好きで、自慢じゃないが、良く褒められる。友人の誕生日に鳥の丸焼きを作ったこともある。
マリネはだめだ。なぜかだめだ。普段あまり使わない計量スプーンで、慎重に作っても、まずい。茄子でも、きのこでも。
マリネより苦手なものは観葉植物だ。
一番育て易いと言われているアイビーを何度も枯らしている。ちなみにミントも枯れた。
唯一健康に育っているのは、実家から連れてきた多肉植物。
しばらく存在を忘れていたのだが、冬の、酷く風が強い夜にベランダを覗いてみたら、満開に花を咲かせていた。
わっと、無責任にも心が沸き立ち、仲間が必要だろうと観葉植物を買ってきた。みるみるうちにしぼんでゆき、やがて全ての葉が落ちた。
母の日の前日、行列にまじって多肉植物を買った。
きのこのマリネを作った。
ちょっと、塩味が足りなかった。
2014.05
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