2012年6月11日月曜日

月報3-FAIR WARNING

2007年03月 某クラシックオーケストラの月報コラム
修正 2012月06月19日

春ですね。新たな音楽との出会いの季節です。
さて、有名なことですが、2004年の木村拓哉主演のドラマ『プライド』の中で、イギリスが世界に誇るロック・バンドQueenの曲が多く使われ、日本でQueen再ブームを引き起こしました。それが、ポール・ロジャースをヴォーカルに招いた、「Queen復活」の手助けとなりました。(と言っても正式には、Queenは解散してなかったのですけどね)
親しみやすいロックを歌い続け、老若男女問わず、世界的に人気なアメリカのロック・バンドBon Joviは、デビューアルバムが日本で大成功、その評判が世界へと広がっていきました。Bon Joviの日本公演が多いのはそれが理由です。
日本は世界的にも、巨大なロック市場であることは間違いではありません。が、それを証明する事件が、2006年に起こりました。まさに、日本のファンの為に、とある欧州のハード・ロック・バンドが復活したのです。それが、Fair Warning

Fair Warningはドイツのメロディアス・ハード・ロック・バンドで、1992年に1stアルバム『Fair Warning』でデビューしました。翌年、日本のハード・ロック/へヴィ・メタル専門音楽雑誌『BURRN!』でブライテスト・ホープに選ばれ、日本公演も果たし、日本での評価は絶大でした。しかし、世界的には評価が低く、本国でもいまいち、いや、いまに。
 1995年、三年の月日をかけた2ndアルバム『Rainmaker』をリリースしますが、やっぱり世界的に評価はいまに。ただ日本では、前作以上に高い評価を受け、二度目の来日公演も行いました。3rdアルバムの『Go!』、4thアルバムの『4-Four』と、年を追うごとに成長を続けるFair Warningに、日本での評価は右肩上がり。本国では、なぜか一向に評価されず…
 結局、才能あるメンバーたちがそれぞれFair Warningを見限り始め、2000年、ヴォーカルのトミー・ハートの脱退を受け、ついに事実上解散してしまいます。
 しかし、極東の島国の熱狂的なファンの期待にこたえて、2006年再結成!5thアルバム『Brother’s keeper』をリリースしました。

メロディック・ハード・ロックやメロディック・スピード・メタルと呼ばれる楽曲は、その名の通り、非常にメロディーを強調し、疾走感のある曲です。聴けば思わず口ずさんでしまう、ライヴは観客の大合唱。時にアニメソングと似た面を見せるこのロックは、どうやら、日本人のツボらしいのです。
 というわけで、繊細なメロディーと哀愁漂うギターソロ、トミー・ハートの圧倒的な歌唱力で日本の若者の心をがっちりと掴んだFair Warningの1stアルバム、『Fair Warningをレヴューします。デビューアルバムで既に形成されている、Fair Warningという概念、トミー・ハートの余裕ある歌いっぷりには驚きを隠せません。

① Longing  For Love 夜の街に愛を求める、孤独な少女の心を歌う、少し重めのロック。始めからトミー・ハートの高い声にびっくりです。
② When Love Fails 壊れ始めた愛の最後を哀しく綴った歌。ビートの効いた、独特なメロディーに悲しさを感じます。
③ The Call Of The Heart 一人の悲しさと、自分の呼びかけに答えが返ってこない虚しさを歌ったバラード。ダイナミックなサウンドと感動的なサビには、鳥肌が立ちます。
④ Crazy あまりにも魅惑的で小悪魔的な女性への恋の、悲しさとも嬉しさとも言えない、微妙な感情を歌ったロック。アップテンポでノリがいい曲です。
⑤ One Step Closer 女性を家に残して、一人離れた土地で暮らす男性の、愛を求める歌。帰ろうかなーという考えがちらちらする、ビートの効いたロックです。
⑥ Hang On 片想いの女の子への、心の叫び。ドラゴンボールのオープニング主題歌を髣髴とさせるメロディーです。イントロとサビのキーボードがいけないんだと思います。いや、とてもいい曲ですよ。
⑦ Out On The Run 白人に、最後まで抵抗を続けたネイティブ・アメリカンの精神を哀しく歌ったロック。スピードとスリル溢れる名曲。
⑧ Long Gone (一部の)人々の間で語り継がれている、伝説の名バラード。辛い別れの記憶の中にも、確かな未来への希望を含んだ、切ない曲。腰砕けます。
⑨ The Eyes Of Rock 若さというエネルギーを解放する、ハイテンションで疾走するロックンロール。「俺たちは死ぬには若すぎる」という歌詞がかっこいい。
⑩ Take A Look At The Future 人は低きに流れる。誤った判断と愚かな行動が続く世界に生きる人々に、物申す曲。重めのビートが心に響きます。最後のコーラスのアカペラには冗談なしにゾクゾクします。
⑪ The Heat Of Emotion この熱い想いを、どこに向ければいいのかと悩む歌。情熱的でノリのいいロック。後半の曲はどれも完成度が高いです。
⑫ Take Me Up 別れた彼女とやり直したいと切に願う、少し後ろ向きだけど、壮大で感動的なバラード。イントロで泣けます。

 2001年に『A DECADE OF FAIR WARNING-Complete Best-という1stから4thアルバムまでのベストアルバムが出ていますので、まずはこれを聴いてはどうでしょうか。しかし、発売レーベルの関係で、選曲にやや偏りがあります。もったいないので、アルバムを全部買い集めるのをお勧めします。Go!』に、日本盤ボーナストラックとして収録されている「Right In The Dark」なんかは、ほんと、日本に生まれてよかった()

月報2-GOTTHARD


2007年02月 某クラシックオーケストラの月報コラム
修正 2012年06月19日

どうもこんにちは。先月から始まったこのコラムですが、読者はいるんでしょうかね?若干不安ですが、まぁ、かまわず今回もハード・ロックのお話を。

 今回紹介するバンドは、スイスの国民的英雄、Gotthardです。2004年のアテネ・オリンピックのスイス・チーム公式テーマソング(One Team One Spirit)を作曲したり、さまざま祭典でスイス国歌を演奏したりしているバンドです。日本でいうところのB’zですかね。と、言っても日本での知名度はかなり低いですが。
 Def Leppardにはまっている私を見て、兄が是非買え、と紹介してくれたバンドです。2003年発売の『HUMAN ZOO』からのお付き合いですが、週に一回は公式HPhttp://www.gotthard.com/)に行って、日本に来ないかなーとチェックしています。というか、スイス行きたいです。はい。大好きです(告白)。
 彼らの音楽は、自分自身を素直に描き出し、示唆や警告に富んでいて、たいへん考えさせられる曲です。ラブソングもダイレクトで、ロックらしい曲ばかり。ヴォーカルのスティーヴ・リーは、やはりハスキーでかっこいい!Def Leppardのヴォーカルよりも低く響く、気取らない情熱的な声が、あまりにもすてき。言わずもがな、歌唱力も◎。はなまる。
ただ、納得がいかないところは、ベストアルバムで新曲を発表とか、そういう商業作戦はやめてほしいなぁ。
 
と、いうわけで、今回はGotthardの7thアルバム、2005年発売の『LIPSERVICE』を語ります。前作の『HUMAN ZOO』、2001年発売の『HOMERUN』も高く評価されていますが、それらとは一線を画すアルバムです。聴いていて、こいつら何かを掴んだ!!と思わせる、洗練された音楽がぎっしりつまっています。

All We Are 自信とは、他人からもらうものではなくて、自分で手に入れるもの。ノリのいい歌です。速めのビートが爽快でテンションがあがります。
Dream On 現実から目をそらそうとする、人の苦悩を捉えた歌。若干重いビートに迷いが感じられるような。
Lift U Up ノリのいいラブソング。レオ・レオーニのギターソロもスティーヴの掛け声も、かっこよすぎ。公式HPPV見るべし。もう一度言うが、かっこよすぎです。
Everything I Want 失恋ソング。“君を愛するという罪を犯した僕を、許して欲しい”なんて、スティーヴだから言えるんだろうな。メロディアスで美しい、素直にいい曲。
Cupid’s Arrow かつての恋人を忘れられるように、キューピッドの矢を待つ、失恋ソング。重いビートとギターの歪みでかなりラフな出来。
I Wonder 元恋人を忘れられず、いつも“僕たち”を考えてしまう。…スティーヴ、病んでる?⑤に続き、重めな哀愁漂う、ラフなロック。
I’m Alive やりたいことをやるんだ!というお祭り騒ぎのノリのいいロック。…躁状態か…な?ワイルドで生き生きとしたロック。
I’ve Seen An Angel Cry 自分の過ちに気付いていても、どうにもできない。必死に改善しようとする歌。簡単に壊れてしまいそうな、緻密でやさしい、ドラマティックな曲。
Stay For The Night ノリのいいラブソング。歌詞は人間としてヒドイように思えるが、まぁ、ロックだし。覚えやすいメロディーの、ワイルドなロック。
Anytime Anywhere 上っ面の付き合いばかりしている君が失敗するのを待っている、という意地悪な歌。愛情表現かな?とても覚えやすいサビ。見せ場の多い曲です。
Said & Done いつも自分を理解しない世間へ、いつか見てろよ、という挑戦的な歌。全体的に低い音で、なんだか若さが感じられます。
The Other Side Of Me ジキルとハイドをモチーフにした、自分の二面性についての歌。低音がしっかりしていて、ノリのいい曲。最後の、サビの繰り返しの前に音がすべて消えるのがスリリングでよいです。
Nothing Left At All 自分には何も残らないことを知っていながら演じ続けていた。周りに求められる人であることをやめるまでの、苦悩の歌。やさしい旋律で、胸にぐさりと来るバラードです。泣けます。
And Then Goodbye 言わなきゃいけないことがあるんだと何回も繰り返して、決心するのにどんだけ悩んだか、どんだけ時間がかかったかだらだら述べた後、最後にやさしい声で「I love you」。飾らない、静かな美しいメロディーの歌。
Nobody’s Home(Bonus Track) 偽りだらけのこの世から逃れようとするけど、どうにも逃れられない。曲の最後には諦めてしまう、示唆的な歌。低音の効いた、ラフで力強いロック。

 いわゆる「正統派」と呼ばれるハード・ロック・バンドで、凝った演出のない曲ばかりです。ベストアルバムやバラード集をたくさん出しているので、ロック初心者でも安心です。
 それでは、また次回。読んでくださって、ありがとうございます。

月報1-DEF LEPPARD


2007年01月 某クラシックオーケストラの月報コラム
修正 2012年06月18日

 あけましておめでとうございます。今月から始まりましたこのコラムでは、CDレヴューを通して、みなさんに非クラシック音楽を紹介してゆきます。非クラシックと言っても、著者の視野の狭さゆえ、若干洋楽寄りになってしまうと思うのですが、お付き合いいただけると幸いです。

さて、身の上話をしますと、5年ほど前のこと。当時はJ-Popを聞いてシングルを買ったり、歌番組を毎週見たりと、一般的な思春期の女子だったわけですが、そんな私の人生を大きく狂わせる衝撃的な出会いがありました。Def Leppardのベストアルバム『VAULT-GREATEST HITS 80-95』です。兄の部屋から聞こえる彼らの音楽をきいて、恋に落ちました
 Def Leppardは、イギリスの80年代のへヴィ・メタル・ムーブメントを代表するバンドです。数多くの名作を発表し、世界中に熱狂的なファンを持っています。彼らの音楽は、シンプルでストレートなロックと、爽快なコーラスが特徴です。リードヴォーカル、ジョー・エリオットのハスキーな声をヘッドホンできくと、不覚ながら、興奮して心拍数が上がってしまいます。


 ご存知の方もいるかもしれませんが、少し、ロック誕生の話をしましょう。
 1950年代、冷戦真っ直中のアメリカでは政策が保守化、人種差別が深刻な問題となっていました。それらのカウンターカルチャーとして、黒人の人権保護を求める公民権運動が盛り上がり、60年代には最高潮に達します。その公民権運動の波に乗るように登場してきたのが、ロックン・ロールです。
 カントリー音楽+R&B(リズム&ブルース)=ロックン・ロールというのが定説ですが、R&B(リズムを強調した黒人労働歌)を白人が演奏したのがロックン・ロール、という説も否めないです。
エルビス・プレスリーらスターによって、ロックン・ロールは爆発的に普及します。が、作曲の才能があまりなかったため、曲が枯渇。そこで登場してきたのが、新曲を大量に生産し、出荷する音楽企業です。このようなロックン・ロールの産業化に加えて、スターの徴兵・死亡などによってアメリカでのロックン・ロールは衰退、イギリスへと音楽の中心が移行します。代表的なのがThe Beatlesや、The Rolling Stonesこの頃「ロック」という略称が定着しました。狭義的に、「ロック」は60年以降のロックン・ロールを指します。
いくつものバンドが商業的に成功し、ロックがメインストリームになってしまったこと(ロックとは、あくまで、反骨精神なのです)、エフェクターやアンプの技術的発展により多彩なサウンドが可能になったことによって、より衝撃的な音楽が求められてゆきます。
そこで、70年代にイギリスを中心にしてハード・ロック(別名へヴィ・メタル)が台頭してきます。ハード・ロックは、「ブルースをロックらしく」演奏することによって勢いを増し、哲学的な歌詞、高い演奏技術を追求していくようになります。60-70年代はさまざまなジャンルのロックが誕生しました。ロックの芸術性を究めるプログレッシブ・ロックもこの時期に興りました。
そして、このような「知的な、凝ったロック」のカウンターカルチャーとして登場したのが、パンク・ロックです。パンク・ロックは、ロックン・ロールの原点へと戻ろうとするムーブメントで、反社会的精神をむき出しにし、衝動的・攻撃的な音楽をすることで多くの若者の支持を得ます。しかし、中心であったSex Pistolsが解散したことによって、パンク・ムーブメントは数年で終わってしまいました。
パンクによって衰退の兆しを見せたハード・ロックは、人気バンドの登場によって再び勢いを取り戻します。その中心的バンドのひとつが、Def Leppardです。

 で、今回は、Def Leppardの神盤と称される4thアルバム、1987年発売『HYSTERIA』をレヴューしようと思います。全世界で1800万枚以上売り上げたといわれる名盤。前出のベストアルバムのほとんどが『HYSTERIA』収録の曲です。全体的にイントロを頑張りすぎた気がありますが、一曲一曲の完成度は異常に高いです。どれも思わず口ずさんでしまうような曲ばかり。③⑦⑨以外はラブソングです。実は、このアルバム製作中に、ドラムのリック・アレンが交通事故によって、左肩を切断。奇跡の復活を遂げたのですが、是非チェックしてください。ドラムを片腕で演奏しているなんて、すごい…。


WOMEN どっしりとした、安定感のあるロック。ビートが効いたロックから、曲が進むにつれて軽くなってきます。思いがけずあっさり終わるので、後味がいいです。
ROCKET 明るいロック。ベストアルバムでは中盤のインストゥルメンタルがカットされていますが、こうゆう挿入のある構成は、成長期って感じがするんですけど…私だけ?
ANIMAL ウォークマンできいていると、どうしても歩調が速くなってしまう。生への欲望?サビのコーラスが爽やか。
LOVE BITES 問題のバラード。鳥肌が立ちます。いや、マジで。…かっこいい。シングルカットされ、全米シングルチャート1位を記録しました。
POUR SOME SUGAR ON ME ノリがよい。元気になります。もう一回ききたい、と思わせる曲。
ARMAGEDDON IT 名曲。Def Leppardといえばこれ!シンプルで明るいロック。ヴォーカルとコーラスの掛け合いが絶妙。
GODS OF WAR こういうゆっくりでヘヴィな曲は、もっと没頭して歌ってくれても良かったかな。コーラス部は文句なしにかっこいい。最後の銃撃戦すきです。
DON’T SHOOT SHOTGUN 重低音が効いていてノリがよい。意味不明な歌詞もよい。曲始めの「She’s so dangerous」はこれでいいのか?
RUN RIOT 社会の制約から抜け出そうと誘う歌。スピード感、スリルたっぷりなロック。
HYSTERIA 題名からは想像できない、落ち着いたメロディアスな名曲。むしろ⑨の方がヒステリック…。天気のいい日曜の朝(ほぼ昼)とかに聞きたい。
EXCITABLE ⑧とか⑨とか、後半はロックな曲が多いですね。これも実にエキサイティングな曲。イントロはまぁ、頑張ったねって感じ。
LOVE AND AFFECTION 低音を中心とした、落ち着いたビートのロック。重すぎず軽すぎず、とてもDef Leppardらしい曲。
LOVE AND AFFECTIONLive

 ハード・ロックにはちょっと手を出しにくいな、とお思いのあなたにオススメなのは、2002年発売の『Ⅹ』。ポップなバラード集のような出来で、ハード・ロックを愛するファンには不評でしたが、とってもよい音楽ばかりですよ。
 と、宣伝もしたところで今回はここまで。長いのに読んでくださってありがとうございました。

2012年6月10日日曜日

はじめに

友人が『ダ・ヴィンチ』に投稿していると聞きまして。
職場の先輩と後輩が、趣味で詩や小説を書いていると聞きまして。
創作とか文学青年/少女に憧れを抱き、このブログを開設した次第です。


まずはじめに、
学生時代に始めた2つのブログ、サークルの月報、mixi、twitter、その他SNSに書散らした落書きの整理(削除ともいう)。

そして最終的に、なんかこう、うまくいろんなものがまとまったりしたら良いなあ。
正直SNS多すぎて使いこなせてない…


楽しく更新してゆきます♪

2010年8月23日月曜日

『フェルディドゥルケ』


2010,08,23 (Mon)
『フェルディドゥルケ』
W. ゴンブローヴィッチ 米川和夫訳 平凡社

もう1年程前に初めて読んだ本なのですが、
あぁ、感想が書けない、まだしっかり理解で来ていない。
と思い、繰り返し読んでいました。
やっとメモを取る程の感想が出てきたので、記します。


主人公は、30歳にして、17歳と偽り、学校の6年級に入学させられる。
未熟さを賞賛する主人公に下された、大人達による、再教育である。
10代の少年達と学校で過ごし、下宿先の家庭では、現代的な女学生と一緒に暮らす。
大人の望む若さを受け入れる学生、
大人の望む若さに真っ向から反発する学生、
大人達の考えには目もくれない学生。
そんな、若さに囲まれ、主人公は悩み、苦しむ。

初めはためらいがちだったが、しかし、一度、口火がきられると、あとはもう急調子で生徒一同、酔いどれの荷馬車引きでも恥じらうにちがいない、きたないうえにもきたない言葉のありったけを争って口にし始めたのだ。そしてお互いに猥雑な悪口雑言や下劣な言葉を熱っぽく人の目を盗むようにしてすばやく取りかわしたばかりか、何人かの者は、塀に白墨でもって、わざわざそうした言葉を幾何学的な図形に書き直して見せたりした。(中略)俺はみんなをとめようとした。
(中略)「なぜそんな下劣な言葉を?!」
「黙ってろ、洟ったれ!」思いきり下品なその悪童は俺にひと突きくらわしながら、こう答えた。(中略)「これはな、愛らしい臀部だなんて子供扱いされねえための、おれたちに残されている唯一の手段なんだ!見てみろ、視学のやつ、柏のかげから狙ってるぞーーーおれたちの一人前のけつをしょんべんくさいおちりにしちまおうと思ってな。分からねえのか?」
(p.49, l.9-p.50, l.6)

「足。」現代性にたいする俺の関心をかきたてようとするのだ。「足にきまっている。わしはおまえたちを知っているのだよ、おまえたちのスポーツ、新しいアメリカナイズされた世代の風俗習慣の事を。手よりも足のほうがいいのさ、おまえたちには足がなによりも大事なのさ。ふくらはぎ!精神文化なぞおまえたちにはなにものでもない。ただ足だ。スポーツ!ふくらはぎ、ふくらはぎ!」むやみやたらとおれの若さにこびようとする。「ふくらはぎ、ふくらはぎ、ふくらはぎ!」
(p.193, l.4-l.9)

成熟などというものを彼女を彼女は侮蔑していた。いや、彼女にとっては、未成熟が成熟にほかならなかった。顎ひげた、口ひげなど認められない、乳母にしろ母親にしろ子供をだいた女など認められないというわけでーーー彼女の魔術的な力の源泉がここにあった。彼女の青春はいかなる理想をも必要とはしないのだ。なぜなら、それ自身がすでに理想だったからだ。おれがーーー理想の青春によって悩まされ苦しめられているおれが、こうした理想の青春を燃えるように渇望したとしてもふしぎはなかろう。しかし、彼女はおれを求めなかった!おれの顔をつらにした!しかも、日ごと日ごとに、ますますもってすさまじくなる一方のたいそうなつらをおれにあつらえてくれたのだ。
(p.238, l.18-p.239, l.7)

この作品には、身体の一部が多く、象徴的に用いられている。
それは、男性器や女性器ではなく、尻、おちり、顔、つら、ふくらはぎ、足など。
本人も著作の中でこう語る。

肉体の基本的部分、飼い慣らされた従順なお尻が本書においては構成の基本となっていて、ほかでもない、つまり、このお尻から物語は始まるのだ。お尻というのは、木でいえば、畢竟、根もとのようなものであって、そこから個々の部分がさらにこまやかな根や枝の分かれとなって分かれてゆく。たとえば、足の指、手、目、歯、耳といった具合だが、そのさい、ある部分部分は、繊細にして精巧微妙な形態の推移のせいで、目にめとまらぬほど玄妙不可思議な変わりようを示す。そして、人間の顔ーーーある方言ではむちという人間の顔は、尻の根もとからもろもろの部分となって育っていった木のいただきを飾る葉の茂みだ。つまり、むちは尻によって始められた連関過程をとじる部分なのだ。そこで、今こうしてむちにまでどうやらたどり着いた以上、ふたたび尻にまで戻るためには、その間にある個々の部分の部品をまた逆にたどって行くほかない。
(p.126, l.17-p.127, l.7)

この作品の男と女の扱いは、『ポルノグラフィア』に比べて、驚く程、軽い。
男女と言う組み合わせは、まるでこの世の、主人公とは別の世の、理のように描かれている。
求めるのは、男同士の兄弟付き合い。
まるで、男女の付き合いから逃れるように、兄弟付き合いを求め、それは結局、失敗する。
この本は一冊まるまる、主人公の悩みと混乱で埋め尽くされている。

2010年2月25日木曜日

恋とか特別とか


時間に余裕ができ、保留していた問題がふわっと急浮上。

知り合いに恋人ができ、既婚者の知り合いが増えた。
ふたりです。ふたりが。ふたりで。一緒に。息子が。
二人暮らしで、ひとつのベッド。
あ、しまった、と思った。
私の知らない世界だ。

ごめんなさい。ごめんなさい、私、わからないんです。
結構本気で、わかりたいんです。でも、わからないんです。ごめんなさい。
そう思って、今日買った漫画。


志村貴子 『青い花 5巻』 太田出版
中村明日美子 『同級生』 茜新社
中村明日美子 『卒業生 冬』 茜新社
中村明日美子 『卒業生 春』 茜新社

百合だけど。BLだけど。フィクションだけど。ファンタジーだけど。
彼女らも彼らもわかっているのに、私は分からないのですね。
高校生も知っていることなのに。


私は焦っているのです。それです。
一般人よりも歩みが遅くて、これだ!と思って直進しても、結局遠回りなのです。
誤差を修正、なんてこと、してたまるか。
何とかして一般人に追いつきたい。
このままでいい。
このままじゃいや。
誰か助けて!
私は一人で歩いてゆけるよ!

私よ、なぜ漫画を買った!なぜ作り話を読んだ!
必要なものは本ではないと、気づいたはずなのに。
私はいつも、人の手を取ろうとしないのですね。

「私は恋をしたいんだ」なんて綺麗にまとめるのは癪だからまとめない。
私はなんて、子供なんだ!大人になりたい!
これは青春。私は青春。

2009年12月28日月曜日

『芋虫』


買ってしまった。


『芋虫』
原作:江戸川乱歩 漫画:丸尾末広 エンターブレイン(ビームコミックス) 2009

『パノラマ島奇譚』と同様に原作は読んでないのですが。
どうやらこれは禁忌らしいのです。変態だそうです。
なぜ?どこが?
夫婦でセックスして、夫が妻に欲情して、妻が夫に欲情することが?

純粋で、汗臭くて、必死で、
生きた人間と生きた人間のかかわり合いで、とても、良い夫婦だと思う。
泣きそうになった。
愛のある夫婦なんだと思った。

強烈すぎてうまく感想が書けないが、私はそう読んだ。